(18)小説 孤独なブロガー

こんにちは、mizuです。いつもお疲れさまです。
誰にでも思い出の音楽というものがあるはずで、自分にとっては単なる過去のヒット曲でも他の方にとっては初恋の時分によく聴いていた曲ということがございます。なので、他の方と音楽の話をするときには要注意で、私は普段他の方と音楽の話をするときにはなるべく確からしいことを言うようにしております。たとえば、ロックバンドについて話をするときには、「ボーカルが素敵な」とかいう言葉を遣います。とはいえ、どんなに確からしいことを申し上げましても所詮は上辺だけの意見に過ぎず、どう転んでも相手との間に壁が築かれる結果に終わります。近頃は、すっかり面白くない人間になってしまったかな、と思うことがよくあります。
(暗くていけません、こんな前書きは。)
では、以下小説です。
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男はモニタを見つめ、今日も他の人が書いた記事をチェックしている。始めたばかりの頃は気付かなかったが、今ではすっかり女性の書いた記事を楽しみにするようになっている。女性であればなんでもよいというのではなく、継続して読むことを決定するためには、相手の文章から知性が感じられたほうが好ましく、さらにタイミングが合っていなければいけない。こうして、男が元来有している気まぐれなどより、現在目を通している記事の大半は男性が作成したものとなっている。むさ苦しくて、ぶっきらぼうで、放っておくとクラッシュしてしまうような文体ばかりだ。男性の作った記事とは対照的に、彼が好読している女性の記事からはそよ風に乗ってシャンプーの香りが漂ってくる。幸せな心持ちになってしまう。ふむ、納豆がお好きなのですね、とても素敵なことでございます、といったふうになる。いかん、いかん、と思ってしまうくらいだ。もしも、この納豆が好きという自分の趣味を男性が書いたなら、ふむ、そうなのですね、ということになるはずである。
なぜ男性の書いた記事を読むのかというと、彼らは普段くだらないことばかりアップロードするけれども、たまにITに関する面白いことを知られてくれることがあるからだ。男と同じ目的で彼らの記事に目を通す人は多いようで、自己紹介文に「エンジニア」「プログラマ」「技術者」という単語が含まれているブログは人気がある。
男はモニタを見ている。
「4月の運営報告」
くだらん、と思いながらも気になるので、ついクリックしてしまう。他の人のブログがどれだけ読まれているか知りたいのだった。ブログを更新することによってわずかながらにでも収入を得ている人は多く、この収入を増やしたいならば閲覧数を増やしたほうがよい。インターネット外で収入を得るためには、部屋から外へ出て、会社に籍を置き、嫌な事でも文句を言わず働くのが普通である。沈黙は金なり、という言を胸に納め、指示されたことを成り行きでこなしていくのだ。けれども、労働者は精神や良心を有しており、あまりにも非道いことはやりたくない。また、できることなら朝はゆっくりと寝ていたい。こうして、会社に雇用されたくないと考える人が会社から帰る道中たまたまコンビニなどに寄り、「アフィリエイト」「ブログで月収〇万円」といった見出しが謳われてあるような雑誌や本を発見し、まずは試しにブログを始める。記事を作っているときにも頭の隅にあるのは収入のことで、だから収入と関係性の高い閲覧数をほのめかすような「運営報告」という単語は大抵誰もが興味を持つキーワードとしてよく記事のタイトルに使用される。運営報告をすることは閲覧数を公開することと同義であり、多くの人が望んでいることである。定期的にこれを行うブロガーはオープンな人として他のブロガーから評価される。