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不断の生活について申し上げますと、私が目指いているのは、雨や風、吹雪に乞い焦れることでございます。今はというと、太陽が出ると気分が晴れやかになりますし、曇り空であれば心持ちはなんとなく、もやっといたします。人の心の有様として自然なことかと思う一方で、嵐や寒い夜が楽しみになったならどんなに素敵だろうと考えてしまうのです。厳しい冬があるから暖かい季節を有難く感じることができるのであって、かるがゆえに冬はあった方がよいと思っております。それにしても、冬の間に葉を落す木の美しさといえば、わたしもこれくらいのものになりたいと思ってしまうほどでございます。木に生まれ変わりたいと思うことがあります。また、空を飛んでいる鳥になりたいと思うこともあります。どうしても成りたい姿があって、どう考えても実現不可能なため、物語の中に現実ではありえないキャラクターが登場するのかもしれません。
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奈々ちゃんね、もしかするとサンタさんの聞き間違えかもしれないけど、今ロレックスって言った?
うん。業務提携してないから無理だよ。
・・・・・・。
このままだと、ポテトのSサイズだよ、いいの?
つまらない。
学校が?
ぜんぶ。
学校の勉強もね、本当は面白いんだよ。算数や理科なんて特に面白いよ。大人になったらわかることかもしれないけれどね。
ランドさん、私をハンバーガーか何かだと思ってるの?
奈々ちゃんは、奈々ちゃんだよ。
メフィストーフィレスには出来て、サンタクロースには出来ないわけ?
何のことかな。
ファウスト、第一部、グレーチフェン悲劇。
どこで読んだの、それ。
家にあった。
奈々ちゃんのパパとママは読書好きなのかな。それで、グレーチフェンそのあとにどうなったかは知ってるね?
天上に連れて行かれた。
いいや、その前、第一部の終わりの部分。
私にそれを言わせるつもり? サンタクロースさん。
なおさら無理だよ。ロレックスをプレゼントして、パパやママに見つかったら大変なことになるんだから。
ランドは途方に暮れる。裕福な家庭で育っていて、物質的な欲求は満たされている。学校の勉強には問題なく付いていくことができている。足りていないのは想像力なのだ。しかしながら、奈々ちゃんは聡くも自分に足りていない内面の要素を補うべく読書を趣味にしている。そうして、周りの子供たちからは無愛想なガリ勉だと思われている。