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ローマ字には筆記体というものがございまして、この書き方を用いますと単語を書くときにペンを紙から離さなくてよいので、すらすらと執筆できます。中学時に教わることですけれども、学生の時は使用機会が滅多に無く、社会に出ると学んでいてよかったと思える場面がしばしばあります。単純に文字を素早く書くことができるのです。とは申すものの、多くの人にとっては要らない能力です。なぜなら、早く書くことができても、先ず相手の話すことや文章を理解できなければ、その能力が役に立つことはないからです。素早く書くことよりも、要約する力の方が大切ということです。ところで、人の考え方は様々でございまして、「スピードが大事」というものがあります。学生にとっては試験を受ける時に制限時間がありますし、社会に出て仕事をするときには納期がございます。他人様と交流するときには、何をするにしても、時間に拘束されます。一方ひとりで物事を愉しむときには時間を気にせず自分のペースで何かに取り組むことができます。理想を申し上げますと、ひとりでいるとき要約する力を身につけたい、と思っております。スピードにつきましては、自分の持つ底力が周囲の人の好調に対抗できるくらいになればよいかなと思っております。
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じゃあ男の人って、何のために会社に行って給料取ってくるの?ハンバーガーやチョコレートチップスのために、早起きして、叱られたりなんかして、毎日へとへとになるまで働いてるの?
大人になればわかるよ。
わからないわ、ここで教えてくれなきゃ。
とにかく寢よう、今日は。
私と?
そんなにロレックスが欲しいの?
冗談よ。
まだ小学生だもんね。いいって言われても、こっちが無理だよ。
来年もまた来てくれる?
来れないよ。
どうして?
別の女のところへ遊びに行く。サンタクロースはね、クリスマスの日には忙しいの。
待ってるわ。
ランドは奈々ちゃんの部屋を跡にする。もう2度と来るものかと思いながら次の部屋へ向かう。
サンタクロースはこうしたことを延々と繰り返す。外回りの者は勤務を終えたら直帰してよい事になっている。仕事好きな者は本国へ戻ってから、まだ仕事をしている同僚を手伝う。業務の量が膨大なので、人員がほんの少し増えたからといって、何かが劇的に改善することはない。作業している者は目の前にあるものを確実に処理することばかり考えていて、存在する全ての作業を完了させようとは思っていない。できなかった分は、なかったこととして消化される。
同僚を手伝うサンタクロースの目的のうちで共通しているのが、気晴らしである。地球で生きている小さな子供の気違い染みた空想の相手をして、精神が疲れてしまう者が多いのだ。楽ではない。そうして、赤い服を着用せられる。
ところで、サンタクロースが身に着けているものといえば赤い服であるが、これは地球で活動するための作業着であり、本国では皆自由な服を着ている。ちゃらちゃらな格好をしているものもあれば、質実剛健ともいえる身なりをしている者もある。仕事着には余計な飾りがいろいろと付いているので動きにくい。できることなら帽子をかぶりたくないと考える者もいる。髭おやじたちは室内を瞬間移動するだけで、屋外へ出ることはないのだから、帽子をかぶる必要ないという意見がある。上司に訴えるものもある。暑苦しいだけといって、税の無駄遣いを謳う者もある。とにかく赤い服には無駄が多い。けれども、何事にも手順という者があり、本気でこのコスチュームを変更したいならば、まず重役達の集まりに参加するべく、仲間の誰かを代議士にする必要がある。年齢規制があって、たとえ髭が白く染まるほどの歳であっても、まだ被選挙権は得られない。ある程度の実績を残せたかと思うほどになって、やっと選挙に立候補できる。早熟な者はすぐに代議士となるものの、周囲のほとんどが長老なためか、革新的な意見が通ることは滅多にない。そうして、根回しに明け暮れる日々を過ごすうちに、自分が何者かよくわからなくなり、いつも間にか同じ穴の貉(むじな:たぬき)となってしまう。