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だんだん暖かになるにつれて陽が長くなります。近頃は、早くから灯りがいらないくらいになってまいりました。こうなると早起きするのが楽しくなります。朝日が寝床へ差す前に起きるのです。何をするのかと申せば、いつも通りのことでございます。早く目覚めた分だけ時間が余りますので、その時間には本を読みます。一日の予定は前日のうちに分かっておりますので、計画通り遂行し、夜になったら早起きした分だけ早く寝床に就きます。まだ先のことでございますが、夏至の頃には、室内の照明を一切使用しないほどにしたいと考えております。

ランドは空を見上げる。暗闇の中で星が輝いている。よく見ると、星に向かってぴょんぴょんと飛び跳ねながら移動している兎がある。背中には布で包んだ荷物を負っている。きっと中には餅が入っている。
兎は気まぐれなので、以前誰に渡したかを考えず、思いつき次第餅を配っていく。星が先だ、と監督から言われれば、皆その指示に従う。星の数は無限にあるので、星から先に配られることになると、その他のお客に与えられる分はなくなる。目の良いドラゴンドラゴンなどは、兎がいつ作り始めて、誰から先に渡していることに気付く事があり、兎が近くを通った時には、「今回は星さんからですか、ではドラゴンに回ってくる分はありそうにないですね」と話しかける者もいる。すると、「あるよ、ほら、あげる」と言って背負っている布を下ろし、持っている餅を全部くれることもある。意地悪するつもりはないらしく、知らない者にでも声を掛けられたなら、ほいほいと餅を渡してしまう。そうして、身軽になった兎は丁寧に布をたたみ、相手の目を見つめながら「有難うございました」と一言添え、ペコりとお辞儀し、去っていく。不断は碌に相手の目を見ずに会話する者が多いけれど、餅をプレゼントするときには、どの個体も同じような挙動をする。他の種族からすれば、不審な動作であるが、兎たちはこれが最も自然なやり方だと思い込んでいる。気になってしまい、「どうしてお餅をくださる時にだけ、しっかりと目を見てお話になるのですか」と問う者もいる。返事は大体同じで、「有難くも受け取ってくださる方へ失礼のないように心掛けておりますがゆえに」というような内容がほとんどだ。あるいは、「わからない」と首を傾げられることもある。
「ランディ、逢いたがっているドラゴンがいるよ」「誰?」
「ママだよ。巣にいるって伝えたからもうじき来るんじゃないかな」「仕事が終わったばかりで疲れてるんだから、今は無理って云ってよ」
「今さら?」「いつ連絡があったの?」
「地球で森を焼いてた時くらいかな」「その時に云ってよ」
「すっかり忘れてたんだ」「わざとでしょう」
「たまには家族と会った方がいいかな、と思って」「余計なお世話だよ」